Happy Halloween

Happy Halloween

　「柊(ひいらぎ)つかさ」は頼りになる先輩である。

　「ハッピーハロウィン！」そう、大きな声で私たちに伝えた。

　「先輩。ハロウィンからもう3日過ぎてますけど？」
　そうだ。今日は11/3。街は瞬く間に、ハロウィンの不健全なムードから一変して、街は秋が迎えにきていた。

　「いーじゃんかっ！さっ。「葉月(はづき)さん」トリックorトリートだよ？」

　「はいはい。飴ちゃんでいいですか？」

　「…それ以外ないの…？」
　怪訝な顔を見せた先輩は「もう一声」と顔で訴えているようだった。

　「すみません。これ以外持ち合わせていなくて。」

　「わ、分かった。その飴もらうから。」
　そう言って自分のデスクに戻っていく先輩はなんとも重たい雰囲気だった。


　–––時が経ち、会社はお昼休憩が終わろうとしていた。

　柊先輩は、お昼休憩中もデスクと睨めっこだった。
　先輩は仕事もできて、コミュニケーション能力も高い。はっきり言ってハイスペック人間なのだ。

　そんな先輩が私に話しかけてくれるなんて相当、気に入られているのだろうか。
　だったら私も…

　「せーんぱい。トリックorトリートですよ」
　先輩はどことなく小さな笑みを浮かべているような気がして、私はドキッとする。

　「結局、葉月さんも3日遅れでしてるじゃないか。」

　「先輩がしてきたんでやり返しですよ。」

　先輩は、「はいはい…」と言わんばかりの顔をして、デスクの引き出しを開けてガソゴソとお菓子を探しているようだった。
　「あぁ。ごめん。葉月さん。お菓子あると思ってたんだけど、なかったみたい。」

　「そうなんですか…。じゃあ今度『トリック』しますね。」

　「あ…そう言うのちゃんと守るタイプの子なんだ…。」

　そう言って私は、自分のデスクに帰った。
　以前として、柊先輩は他の同期や後輩と話しているようだった。

　–––定時前。部長から招集を受けた。

　「この度。我が社の柊くんが、優秀な業績を残したこと証して社長から優秀賞を贈られることになったぞ。」

　同期からの拍手と歓声で、あたりはもみくちゃになった。


　その夜、いつものように残業していると、どうやら柊先輩も残業するようで二人きりになった。




　…私は今まで溜め込んでいたことをついに決心することにした。







　仕事終わり。私は、持っていたナイフで、先輩のことを「刺し殺した。」


　先輩はただ掠れた声で「なんで…」としか言っていない。
　「今まで先輩がうまくいってて妬ましいんだよ。何が優秀賞だよ。キモチワルイん
　だよっ！。」
　そういってまた私は、ナイフを刺す。

　「そうだ。これは私からの『trick」ですよ。」

　ただ。先輩の悲鳴だけが、私を包む。

　「先輩。Happy Halloween.」
　呪うならまた来年ね。