過保護な彼はズルくて甘くてやさしくて
 気がつけば龍平くんは私の中を埋め尽くしていて、逃げ道なんてどこにも見当たらないくらい彼のことしか見えなくなっている自分がいる。
 それも彼の計画通りなのだろう。
 そんなことをしなくたって『好き』と囁かれれば、ころりと彼に落ちてしまうほどには昔から憧れの男性は、ずっと私にとって龍平くんなのに。

 ちゅっと頬にキスされて、見つめられると今度は唇に彼の唇が迫ってくる。
 あわてて手にしていたルームウェアで唇をガードすると、龍平くんは優しく笑った。

「紗也は俺とのキスは考えられない?」
「……だってこれ以上、龍平くんのこと好きになったら離れられなくなる」
「俺は紗也のこと、離さない」
「もう女の子と遊んだりもしない?」
「しない。紗也を悲しませるようなことは絶対しない」
「……好きって聞いてない」
「好きなんてもうとっくに通り越して、俺は紗也のこと愛してる」

 そう言って龍平くんは私を強く抱きしめた。
 愛情を伝えるみたいに、ぎゅってして耳にキスを落とす。
 もう一度、愛してると言われた気がしたくらい優しく触れた唇があたたかい。
 
「今日は帰さないって決めてるから」

 いつも私の気持ちを大事にしてくれている龍平くんが『強引』という名のカードを切る。
 まるで有無を言わさぬジョーカーのように。
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