ワケありお嬢さま Side双葉

デート?!






次の日。
友だちができたことで浮かれていた私は朝から階段で盛大に転んでしまったのであった。

「大丈夫?」
声をかけてくれたのは昨日仲良くなったばかりの加藤くん。

「…ごめんなさい。全然大丈夫です。」
「怪我してない?保健室いこうか?」
「たぶん、打撲と擦り傷とかなのでお構いなく。」
「俺が心配だから、やっぱり連れていく」

まだ仲良くなって2日目だが、加藤くんはとても心配してくれていた。

軽い処置をしてもらい、保健室を出るとそこには未羽ちゃんと夏目くんも来ていた。

「悟から連絡もらって!双葉ちゃん大丈夫?」
「未羽ちゃんありがとう、大丈夫だよ!」
 
昨日仲良くなったばかりなのに、心配してくれる友だちに囲まれ嬉しくなってしまった。

 
「昨日の部活でさ、圭人が…」
「いや、それは悟のせいでしょ」
「たぶん、圭人無意識にやってるよ」

休み時間の会話。
加藤くんや夏目くん、未羽ちゃんの仲良しな会話を聞いているだけで楽しい。きっとこの会話には入っていけないなと思っていると、加藤くんに手招きされた。

「双葉ちゃん、来週の水曜の放課後予定あったりする?」

内緒話をするかのように小さな声で私へ話してきた。
 
「いえ、特には」
「気になるスイーツのお店があるんだけど、男1人だと入りずらくて。良かったら一緒にいかない?」
「スイーツですか?行ってみたいです!」

放課後に遊ぶ約束をしてしまった。
友だちと放課後に遊ぶ。憧れでもあったシチュエーションに心踊り、1週間が長く感じてしまうほどだった。

 


1週間後の水曜日
今日の放課後は加藤くんとお出かけ。
ワクワクしているのが、朝から伝わったのか凌雅さんから不思議そうに尋ねられてしまった。

「何か良いことでもありましたか?」
「あっ…いえ。あ、今日のお迎えはいらないです。」
「わかりました。お友だちですか?」
「はい、スイーツ食べてきます。お土産も買ってきますね。」
「私のことはお気になさらず。駅までのお迎えが必要であればご連絡ください。」

朝から放課後が待ち遠しかった。

放課後。2人で下駄箱へ向かおうとしていると未羽ちゃんに声をかけられた。

「あれ?双葉ちゃんと悟?2人で帰るの?」
「圭人には内緒な?デート。」
「え?!デート?どういうこと?」
「双葉ちゃん、明日報告してね!」

なんだか良くない勘違いが起きている気がする。
未羽ちゃんはそのまま走って行ってしまった。

「あの…デートなんですか?」
そのつもりは無かったので、加藤くんへ聞いてしまった

「うん、デート。双葉ちゃんのこと気になってるからね。」
 
気になってる。嬉しいような恥ずかしいよう不思議な気持ちで返す言葉も見つからないまま、お目当てのスイーツカフェへ向かった。

「いらっしゃいませ〜」

入ったお店は北欧風の内装の落ち着いたカフェだった。
たくさんの美味しそうなスイーツに迷っていると

「これ2つ頼んで半分こしない?」

ショートケーキとチョコレートケーキを指さし、加藤くんが提案してくれた。
もちろん美味しそうなケーキに断る理由は無かったが、ふと凌雅さんとのファミレスを思い出し考えてしまった。

凌雅さんなら何を選ぶのだろう。そして私に何をすすめてくれたのだろうと。

なぜ頭に浮かび考えてしまったのかは分からなかったが、一度考えるのをやめて、注文をした。

「ここオープンしたばっかりなんだって」
「そうなんですね」
「綺麗だよね〜SNSで有名らしくて…」
 
加藤くんはお話上手だった。
私が苦手な会話も、リードしてくれ話が途切れることもなかった。

ケーキが届き、食べながら話題は美羽ちゃんたちの話になった。

「圭人と美羽ってね中学から付き合ってるんだよ」
「長いんだね」
「そう、俺は中々彼女できないのに」
「加藤くん、彼女さんいないんですね」
「そうだよ!だから、双葉ちゃんは彼女候補」
「え…?」
「まあ、まだ告白とか付き合おうとか言うつもりはないから安心して。」

急な告白のようなセリフに思考停止したが、恥ずかしくなって急いで食べ切り、そろそろ門限と嘘をついて帰る提案をした。

そして、お店を出る前にお土産用のスイーツを選んだ。
もちろん、凌雅さんのために。
ショーケースを真剣に覗きながら何がいいかと頭を悩ませた。甘いものを食べているイメージはなかったので、さらに迷う…

「何か迷ってますか?」
親切な店員さんが声をかけてくれた。

「甘いのがあまり得意では無い男性でも食べられるものありますか?」

そう聞いてみるとプリンを提案されたので、そのままプリンを2つ買い、外へ出た。

「そういえば聞きたかったんだけど、この前のお迎え来てた人、彼氏とかじゃないよね?」
加藤くんが凌雅さんのことについて聞いてきた。

「違うよ…親戚の人。親が今大変でお手伝いにきてもらってるの。」
また、嘘をついた。

「親戚ねぇ、変な虫つかないようにかな?すごく怖い顔してた気がして。」
「元々、顔怖いタイプなんだよね」

そんな話をしながら駅に向かって歩いていると見慣れた車が目の前に止まった。
凌雅さんだった。

「え?どうして?」
「帰るところとお見受けしたので。失礼いたします。」

そう一言、加藤くんに向かって声をかけるとさっと私を車へ押し込み、発進させていた。


「あの……どうして帰るってわかったんですか?」
「双葉様にGPSつけてますので。」

たぶん携帯のGPSだろう。
昔、お屋敷にいた時も護身用としてGPSをつけていたことがある。
ただ、声が明らかに何か怒っていそうな話し方だった。

「なにか怒ってますか?」
「いえ、特には」

特にはと言う割にやはり声が冷たい。
夕食の時にプリンを渡してその時にもう一度聞こうと思った。




今日の夕食はカルボナーラ。
私はソースの作り方を習っていた。
切り終わった具材をフライパンにかけ、牛乳やコンソメをいれていく。

帰ってきてからの凌雅さんはいつも通りだった。
気のせいだったのだろうか。
食事が始まる前に買ってきたプリンを渡した。

「これ、今日行ったお店のお土産です。そこまで甘くないものみたいなので良かったら食べてください。」
「あのさ、1つ聞いていい?」
「なんですか?」
「一緒に居た人は?」
「この前学校で凌雅さんと会った友だちです」
「へぇ。1つ忠告。男を信用しすぎないようにな」

それだけ話すとプリンとカルボナーラを持って、自室へ戻って行ってしまった。


何を言いたかったのだろうと思いながらカルボナーラに手をつけはじめた。

何か、悪いことでも言ったかな。
食事は一緒に取る事が最近は多かったので、1人での食事に寂しさを感じながら夕食を食べた。
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