青空
そう、まだ安静を宣告されていたときに、病室を抜けだしてあの金網までいったときだ。

自分のわがままのせいで、折角救ってもらった命を無駄にするところだった。


今思うと、後悔に似た念に囚われる。


でも会いたかった。

待ってくれてる彼女に。



「そろそろ時間じゃないか?」

テツオはその声に、思わず尾上のほうを見た。

そんな様子に気がつかないかのように、尾上は診察用の椅子に座ったまま、注射器に薬を入れている。


「何のことだ。」

「働きづめの俺に同情して、行かないとか思っているんじゃないんだろうな。」

テツオは話をそらそうとしたが、尾上にはその心中などお見通しであった。
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