青空
テツオはそれを悟ると、観念したかのように息を吐いた。


「いいんだ。お前も含めて一生懸命頑張っているっていうのに、俺だけわがままを言うわけにはいかないよ。」

テツオのその言葉を聞くと、尾上は無言で立ち上がった。


そして窓辺に立つと、その桟に両手を乗せ、尾上たち医学部の学生や教授の診察を待つ民衆の列を見下ろした。


「この隔離された地域には、もう薬なんてないというのに、これだけの人々が、自分が恐ろしい感染症にかかっていないか不安に思っている。」

テツオはそう言う尾上の後姿を見ながら、小さく頷いた。


「お前だってその大怪我だ。俺だって、あの爆発で吹っ飛んだガラスの破片で、頬に切り傷を負っている。」

「…。」

何も答えないテツオに、尾上は外を見たままその右手を強く握って問いかけた。
< 131 / 205 >

この作品をシェア

pagetop