青空
テツオはそう思うと、金網沿いに走り出す。

そして森の中に入ると、足を止めて金網の向こうに人影を探した。


しかし、そこには誰も見つけることが出来なかった。


(無理もない…、あの様子では…。)

テツオは、力なく木の根元に座り込んだ。


そのとき不意に傷口がズキンと傷んで、思わず顔をしかめた。

いたむ右腕を押さえながら、どんよりと曇った空を見上げた。


「テツオ?」

金網の向こうでかすかにした自分を呼ぶ声に、テツオはふいに視線を向ける。

そこには憔悴しきった様子で、こちらを見つめる少女の姿があった。


その汚れきったスカートが痛々しい。


「…すまん。待たせたな。」

「ううん。無事でよかった。」

亜季はそう言って、満開の笑みを漏らした。
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