青空
亜季は座りなおすと、先ほどバッグから出しまま手に持ち続けていたたメモを見つめた。

そこには「西荻窪」という駅名が書いてあり、その下には駅名と同じ住所が書いてある。


それは亜季が自分で本を取り寄せて、そこに書いてあった不動産屋に電話をかけ、郵送でのやり取りによって契約したアパートの部屋の住所だ。

もちろん高校を卒業したばかりの未成年の亜季が借りるには保証人が必要であったが、母親が父親に内緒で署名捺印をしてくれた。


しかし電車に揺られているうちに、亜季はこのあまりにも多い人の住む東京で暮らすことに、高揚に加え多少の不安を抱き始めていた。

目の前を過ぎて行く、このものすごく早い時間の流れが支配する世界で、いったい自分は生活していくことができるのであろうか。


どんなに自分だけは違うと肩肘張ろうが、自分はのどかな村で育った田舎者であるという事実は、亜季も認めざるをえない。

このあまりにも違う文化の中で、たった一人で暮らしていかなければいけない。


自分が選んだ道とはいえ、亜季は不安になった。


亜季はその湧き出る感情を振り払おうと、首を軽く数度横に振る。
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