青空
初老の男性が口火を切った。

「しかしその甲斐もなく、多くの市民が亡くなってしまいました。正体不明の病原菌に、効く薬が見つからないのです。」

その会見を、亜季は下唇を噛んで見つめていた。そのあまりの形相に、伯父は一瞬息を呑んだ。


「そこで私たちは、ある発病が始まった患者と協力をして、臨床実験に入ることとしました。」

そこまで初老の男が言ったところで、隣の若者が口を挟んだ。


「彼は勇気と優しさを持った人間です。僕はきっと、彼の症状が改善すると信じております。彼の思いが、多くの苦しむ市民の皆さんを救うのだと確信しています。」

彼は立ち上がった。


「私たちは生きております。まだこうして呼吸をして、言葉を話して、少ない物資の中懸命に生きています。」


若者は高揚したように、机を両手の平で叩いた。
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