青空
「…さんですよね。」

目の前には、テレビで見たあの青年が、ずぶ濡れで立っていた。

雨に吹き晒されたその青年は何も言わなかったが、その沈んだ目を見て亜季は全てを悟った。


亜季は、目の前の青年から視線をはずしながら、うめくように話しかけた。

「尾上さんですね…。」

「はい…。」

尾上はただ一言、そうとだけ答えた。


亜季は青年の暗い表情を見ると、静かにそしてゆっくりと両目を閉じた。

あたりには、夏の激しい雨がホームを叩く音が鳴り続けている。
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