青空
ベンチの左端に座る亜季に並ぶように、尾上は右の端にゆっくりと腰を下ろした。

その姿を見ようともせず、亜季はじっと雨にぬれる地面を見つめた。


「テツオは、本当によく頑張りました。」

尾上は奥歯をかむように、ゆっくりとそう言った。


「衰弱した体に鞭を打ちながら、様々な投薬に耐え抜きました。」

「…。」

亜季は長いまつ毛に雨の雫に濡らしながら、瞬きひとつしなかった。
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