青空
「東京は何でもあるところ。」

「だからいいんじゃないですか。」

亜季は少しむきになって、そう答えた。

その顔を見て、まりは笑った。

「やっぱ、いいところだ。」

「なんでですか?」

「だって、素直な亜季ちゃんが育ったところだもん。」

素直、と言う言葉に、亜季の心はちくりと痛んだ。


「素直?ですか。」

「そう。初めてお店に来たときなんかかわいかったなあ。」

そう言って、まりは再び窓の外の桜を見つめる。



「私の田舎の桜は、一週間くらい前かな。」

「え?まりさんって、東京の生まれじゃないんですか?」

亜季は驚いて、思わずそう尋ねる。


いつもセンスのよい私服を着こなしているまりは、てっきり東京で生まれ育ったのだと勝手に思い込んでいた。
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