青空
「違う違う。私は美容師になりたくて、東京の専門学校に入るために上京してきたんだ。不安だったなあ。」

「そうだったんですか。」

亜季は、目の前にいるまりが、自分と同じように不安と希望を抱えて上京してきたと思うと、ふうっと気持ちが緩んだ。


自分も何年かしたら、このような素敵な女性になれるのだろうか。


「亜季ちゃんは、どうして東京に来たの?」

「え、私ですか?」

横でそう尋ねるまりの顔を見て、亜季は少し戸惑った。


上京してきた明確な理由など、正直何もない。

ただあのつまらない田舎を出たかっただけである。


「東京で、自分を試してみたかったんです。」

亜季はそう答えて、ものすごく恥ずかしくなった。

そんな答えしか出来ない自分を見て、まりは呆れてしまうのではないであろうか。



しかしまりは、呆れたそぶりなど見せなかった。

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