青空
「なるほど。いいじゃない。」

まりはそう言うと、何度も頷く。


思いのほか正面に受け止めてくれたまりに、亜季は感謝した。


「桜ってさ、田舎を思い出すんだよね。」

「田舎を、ですか?」

「そう、田舎。全然違うこの街でも、桜の花だけは同じなんだよね。」

まりはそう言ってビールを一口飲むと、亜季のほうを見た。


「亜季ちゃんは、そんな田舎を思いだせる最高の場所に住んでいるわけだ。」

「そうですかね。」

「そうよ。」

亜季は、そうきっぱりと言うまりのことが、さらに大好きになった。


独りぼっちであった東京の生活での、心のよりどころが見つかった気がする。


そんな二人の女性を、頭上からあの緑に囲まれたふるさととかわらぬ月が優しく照らしていた。
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