青空
「来た。」
「そうだな。」
機先を制されたテツオはばつが悪そうにそう言うと、ホームから乗り出すように迫ってくる列車をうれしそうに見詰める亜季の後姿を、無言で見詰めた。
やがてホームには、1両編成の古ぼけたディーゼル機関車が入ってきた。
亜季は後ろに立つテツオの姿などなど気にすることもなく、まもなくホームに止まろうとするその列車に向かって走る。
そしてその扉が開くと同時に、列車のタラップに右足をかけた。
その時、テツオは何を思ったのか、突然亜季の右手を掴んだ。
「な、何…。」
亜季は事情を飲み込めずに、やや怯えたようにそう言った。
しかしテツオは、おかまいなく亜季の右手に、ひとつの汚れた野球ボールを置いた。
そのボールがどういう物なのか、亜季はよく知っている。
「そうだな。」
機先を制されたテツオはばつが悪そうにそう言うと、ホームから乗り出すように迫ってくる列車をうれしそうに見詰める亜季の後姿を、無言で見詰めた。
やがてホームには、1両編成の古ぼけたディーゼル機関車が入ってきた。
亜季は後ろに立つテツオの姿などなど気にすることもなく、まもなくホームに止まろうとするその列車に向かって走る。
そしてその扉が開くと同時に、列車のタラップに右足をかけた。
その時、テツオは何を思ったのか、突然亜季の右手を掴んだ。
「な、何…。」
亜季は事情を飲み込めずに、やや怯えたようにそう言った。
しかしテツオは、おかまいなく亜季の右手に、ひとつの汚れた野球ボールを置いた。
そのボールがどういう物なのか、亜季はよく知っている。