青空
粗末な対面式のホーム上に置かれたベンチに座りながら、亜季は横に座るテツオの顔を見ることが出来なかった。

あの頃は何とも思わなかった同級生が、今日はとてつもなくたくましく見える。


亜季は必死に呼吸を整えながら、テツオの横顔を見つめた。


「これからどこに行くの?」

「ああ、夏休みだからな。部活の練習をみっちりやるんだとさ。四年生がやたら張り切ってら。」

「あ、そうか…。夏休みか…。」

亜季は今になって気がついた。


そう、大学は今夏休みに決まっている。

めまぐるしい都会の渦に飲み込まれながら、そのようなことすら頭に思い浮かびもしなかった。


亜季は沈んだ目で、目の前の山の上に立つ大きな一本木を見つめた。
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