青空
亜季は軽く深呼吸をして少し心を落ち着かせると、まだ少し不機嫌そうなテツオに向かって尋ねた。


「練習はいつごろ終わるの?」

「うーん。五時くらいかな。」

「わかった。じゃあ六時にここで。」

「おいおい、勝手に決めるなよ。」

テツオはあまりにも一方的な亜季の言葉に、そう抗議の声を上げる。


亜季はそんなテツオの顔を見上げるように近づくと、再び意地悪そうに言った。

「じゃあ、何か予定でもあるの?」


テツオは苦笑すると、観念したように言った。

「いや、何も無いけど。」

「じゃあ、決まりね。」

そう言う亜季の語尾に、ディーゼル機関車の警笛の音が重なる。


二人が陽炎に揺れる線路の彼方に目を移すと、地平線の彼方に青い車体がわずかに見えた。


「お迎えが来たよ。」

「そうだね。」

立ち上がるテツオに向かって、亜季はベンチに座ったまま列車を見つめながらそう答えた。
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