青空
村の集落を走る亜季の姿を見て、一部の大人たちが声をかけてきた。

狭い地域社会であり、ほとんどの住民が顔見知りである。

亜季はそんな大人たちに軽く会釈をするだけで、一心不乱に走り始めた。


しかしほとんどの住民は、久しぶりに見る亜季の姿に気がつかなかった。


何人かで集まりなにやら話しながら、地平線の向こうで燃え盛る、巨大な赤黒い炎を見つめていた。

その炎を横目で見るたびに、亜季の心はかきむしるような不安にかられる。


亜季は、路地に面して営業している、一軒の電器店のガラス戸を押した。

「おう、これは…亜季ちゃんかい。」

柔和なしわが刻まれたその老人は、ガラスカウンターの向こうに座ったまま、驚きの表情を浮かべてそう言った。


「ひ、久しぶり、義男おじさん。」

小さい頃自分をかわいがってくれた母方の伯父に、亜季は動転した声でそう言った。
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