青空
「恥ずかしい話だけど、俺は本気でプロ野球を目指してたんだ。」

テツオはじっと、澄み渡った夜空を見つめた。


「へたっぴいなくせにな。」

「そんな…。」

亜季はうつむきながらそう言うと、すぐに言葉が出てこなかった。


ただ一筋の涙が、静かに形のよい頬を伝っていく。

唇の震えが止まらない。


「私は…テツオに認めてもらえるほど、頑張ってはいなかったんだ。」

「そんなことないさ。」

そんなやさしいテツオの言葉に、亜季は必死に首を振った。


「私、東京に行けば、何もしなくても変われると思ってた。きっと何かが起こると勝手に思ってた。」

亜季はそう言うと、顔を上げて少し心配そうに見つめるテツオを真っ直ぐに見た。


「でも間違いだった。自分から何かをしなければ、何一つ変わらないの。テツオのボールに書いていた(まず一歩)、その言葉を理解することが出来ていなかった。」 

そこまで言うと、亜季は耐え切れず泣き出し嗚咽した。


「そんなことないよ。」

「そうだよ」

「ちがう。」

いつも穏やかな口調のテツオが、きっぱりとそう言った。
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