青空
「東京に出て頑張ろう、その一歩を踏み出したじゃないか。俺にはそんな勇気なんかないよ。」

「…。」

「次は、もう一歩踏み出せばいいだけじゃないか。」

そう言って、まっすぐと見詰めるテツオの視線が痛かった。


「可愛くなったなあ、亜季。」

テツオは突然、無邪気そうにそう言った。


突然の言葉に亜季は一瞬あっけに取られたが、すぐに真っ赤になりながら答えた。


「こんな時に、何言ってるのよ。」

「こんな時だから言ってるんだ。」

亜季ははっとしてテツオのほうを見た。
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