Anonymous〜この世界にいない君へ〜
『今日、俺たちが警視庁に登庁した頃に通報があって現場に夏目と向かった。だが捜査一課の刑事もダウンしている始末だ』
「……すぐに向かいます!」
紫月は電話を切った後、残っていたフレンチトーストを急いで平らげてカフェを出る。今日も真夏と変わらない気温だと天気予報で言われており、すでにアスファルトの地面は熱を持っている。
しかし紫月の頰を伝うのは、暑さによるものではなく嫌な予感からくる冷や汗だった。
事件現場である山には、黄色の規制線が張られて制服姿の警察官が見張りをしていた。その近くでは鑑識が山の中に入って行き、山の出入り口には捜査車両が多く止まっている。
止められた捜査車両の間を通っていた紫月だったが、ふと横にあった捜査車両を見た際、運転席に見知った顔があったことに気付いた。蓮だ。
「夏目」
窓をノックすると、蓮の肩が大袈裟に見えるほど跳ねた。勢いよく上がったその顔は、まだ朝だというのに疲れ切っている。顔色も悪い。
「太宰さん……」
「……すぐに向かいます!」
紫月は電話を切った後、残っていたフレンチトーストを急いで平らげてカフェを出る。今日も真夏と変わらない気温だと天気予報で言われており、すでにアスファルトの地面は熱を持っている。
しかし紫月の頰を伝うのは、暑さによるものではなく嫌な予感からくる冷や汗だった。
事件現場である山には、黄色の規制線が張られて制服姿の警察官が見張りをしていた。その近くでは鑑識が山の中に入って行き、山の出入り口には捜査車両が多く止まっている。
止められた捜査車両の間を通っていた紫月だったが、ふと横にあった捜査車両を見た際、運転席に見知った顔があったことに気付いた。蓮だ。
「夏目」
窓をノックすると、蓮の肩が大袈裟に見えるほど跳ねた。勢いよく上がったその顔は、まだ朝だというのに疲れ切っている。顔色も悪い。
「太宰さん……」