Anonymous〜この世界にいない君へ〜
本棚に並べられた本を見て、彼女は酷く驚いていた。作者名である「泉翡翠」という名前を指でなぞる。

「私の名前?私と同じ名前をペンネームに使ってる人がいるの?」

クローゼットのドアを開ける。そこにあったたくさんのクラシック・ロリータに彼女は目を輝かせた。頭の中で何度も着てみたいと想像した服ばかりである。

「可愛い……!」

クローゼットからロリータを数着取り出し、ネグリジェを脱いでロリータに袖を通した。リボンがついたシアーブルーのアリス風のワンピース、グレーのコートワンピース、花柄の袴風ワンピース、白い菊が描かれたミントグリーンのドレス。彼女の胸の中は幸せで満たされていく。

「素敵なお洋服ばっかり!」

他にはどんな素敵なものがあるのだろうかと彼女は探検を続ける。キッチンにたどり着いた。キッチンの冷蔵庫を開けると、タッパーに入れられたキムチを発見して蓋を開ける。しかし、彼女はキムチという食べ物を知らなかった。

「辛い!」

一口食べて彼女の顔は歪む。彼女はタッパーを戻し、キッチンを出た。
< 2 / 123 >

この作品をシェア

pagetop