Anonymous〜この世界にいない君へ〜
「なるほどな……」

紫月はフラペチーノに口をつける。バラバラ殺人事件をする犯人の心理など、ここまで考えたこともなければ知ろうともしなかった。ただ一つ頭にあったのは、「こんなことをする奴はイカれている」というだけだ。

「まあ、被害者が誰なのかも特定できていないからな」

「年齢層によって犯人の目的も変わるだろう。また被害者が誰なのかわかったら教えてくれ」

被害者の特定は困難を極めている。法医学研究所で身元がわからなかった場合は、もう警視庁でも打つ手はない。

(身元がわかってくれ……!)

紫月は拳を握り締める。ただ、こうして祈るしか今はできなかった。



事態が動いたのは、紫月がアノニマスと会って三日後のことだった。幸成から連絡があり、遺体の身元がわかったのだという。僅かに残っていた髪の毛からなんとかDNA鑑定をすることができたそうだ。

被害者の名前は福沢亜美(ふくざわあみ)。山梨県甲斐市に住む中学二年生だ。遺体が発見される二日前から家に帰っていないと家族から警察に通報があり、捜索届が出されていた。
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