Anonymous〜この世界にいない君へ〜
想像よりもずっと若い犠牲者に、捜査一課はもちろん「未解決捜査課」も騒然となった。何故十三歳の少女がこれほど悲惨な目に遭わなくてはならないのか。誰もが胸に怒りを覚えた。

紫月と蓮は山梨県まで車を走らせた。亜美の家族に事情を聞きに行くためだ。高速道路に乗り、途中のサービスエリアで休憩を取る。蓮がサンドイッチを食べながら言った。

「可哀想ですよね。まだ十三歳で……」

「ああ。絶対に犯人を許しちゃいけないな」

紫月はソフトクリームに口をつける。今日も日中の気温は三十五度を超えている。冷たいソフトクリームの存在は紫月にとってありがたいものだった。

車を再び走らせる。やがて山梨県甲斐市に到着した。福沢亜美の自宅は閑静な住宅街にあった。住宅街からは山が見える。

亜美の自宅は二階建ての大きな家だった。捜査資料によると、亜美は父親と二人暮らしのようだ。二人で暮らすには大きい家である。

「チャイム、押しますね」
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