Anonymous〜この世界にいない君へ〜
義夫は真っ赤に腫れた目で仏壇に置かれた写真を見つめる。写真の中の女性は優しく微笑んでいた。

「私も妻も教師です。亜美は勉強が好きで成績がよかった。友達によく勉強を教えてあげていると聞いたことがあって、亜美ならきっといい教師になると思っていたんです。……こんなことになるなら、頭ごなしに否定しなければよかった!」

義夫の口から嗚咽が漏れた。紫月と蓮はただ静かにそれを見守ることしかできない。

重苦しい空気は、福沢家を出た後でも紫月の体に纏わりついて離れなかった。











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