Anonymous〜この世界にいない君へ〜

彼女が死んだ場所

警視庁に紫月と蓮が到着した時、辺りは薄暗くなり始めていた。一般職ではもう退勤時間はとっくに過ぎている。しかし、警察官ーーー特に殺人事件を追う捜査一課の人間には退勤時間などは存在しない。

（まあ、俺のいる部署は一般職と変わらないがな）

紀人たちはもう帰っているだろう。そう思いながら紫月と蓮は「未解決事件捜査課」のドアを開ける。すると部屋の電気がまだついていた。そして、昼前に紫月と蓮が部屋を出た時と同じように紀人たちが未解決事件の捜査資料をデスクで見ていた。

「えっ！？皆さんまだ残ってたんですか！？」

蓮が大きな声で驚くと、尚美が顔を上げて「うるさいわねぇ。あたしたちがいたら悪いわけ？」と鬱陶しそうに顔についた髪の毛を払う。碧が「おかえりなさい。今、コーヒー淹れますね」と椅子から立ち上がり、部屋の奥へと向かう。部屋の奥には簡易キッチンがあり、コーヒーや紅茶が常備されているのだ。

「二人とも、山梨までご苦労だった。話は聞けたか？」