Anonymous〜この世界にいない君へ〜
「まだ容疑者が一人も絞れていない。彼女に関わる全ての人間を疑うべきではないかと思う」

悲しいことだが、日本の長い歴史の中で未成年の少年少女が殺人という決して許されない罪を犯した事件はゼロではない。遺体の状況や事件の凄惨さからも、この捜査は慎重にすべきだと紫月は思った。

「とりあえず、亜美さんが家を出てからの足取りが知りたいわよね〜」

「山梨県警、防カメの映像こっちにもくれないかな〜」

尚美と彰が深い息を吐く。現在、捜査一課でもこの「未解決捜査課」でも、事件のことは推測でしか物を言えないという最悪な状況だった。

しかし、そんな状況をひっくり返してくれたのはアノニマスである。



それから数日、捜査は変わらず目立った進展はなかった。山梨県警から防犯カメラの映像は提供されたものの、亜美の姿は未だに発見されていない。そもそも防犯カメラがそこまで設置されていなかったのだ。

「カメラ映像だけでどれだけの時間を要することやら……」
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