Anonymous〜この世界にいない君へ〜
「君めっちゃ可愛いね〜!俺と一緒にゲーセン行かない?俺、めっちゃ頭いい××高生だよ。エリートと付き合えるチャンスだよ」

アノニマスは無表情で快児を見ている。紫月は慌てて「泉先生は私たちに協力してくれている人間です」と言ったものの、快児は「は?」と返しただけだった。リップグロスが塗られた唇が静かに開く。

「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さぬきの造となむいひける」

「……は?」

アノニマスの口から出た文章に、快児は鳩が豆鉄砲を食ったような顔を見せた。そんな彼にアノニマスは見下したような目を向ける。

「中学校で習う古文を知らないような人がエリートだなんて、おかしくて笑えますね。どうせこの古文が何の物語かも知らないんでしょ?本当にエリートなのかしら」

快児の顔がゆっくりと赤く染まっていく。それは恥ずかしさからではなく、激しい怒りによるものだった。快児が、「このクソアマ!!」と言いながら拳を振り上げる。素早く紫月はその腕を掴んで捻り上げた。
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