眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
 はあ、と息を整えてからローラが名前を呼ぶと、ヴェルデはローラから離れていく。そして頭を抱えると、部屋の中の物がカタカタと音を立てて静かに揺れだした。いつかの時のように、ヴェルデが自分を抑えられなくなっているのだ。

(あの男、エルヴィン殿下と瓜二つなんだろう。ローラの様子だときっと声も似ている。あの男がエルヴィン殿下のようにクズだったら良かったのに、真逆でローラをまるで気遣うような態度を取って……)

 ヴェルデは苦しそうにしながらローラを見る。

(あの男の表情に、言動に、ローラはたぶん心を奪われていた。怖がっているはずなのに、まるでエルヴィン殿下に優しくされたかのように戸惑っている。許せない、エルヴィン殿下はもういないのに、ローラの側にいるのは俺なのに……)

 ローラを見るヴェルデの目が据わっている。そのままヴェルデはローラの近くまで歩き、ローラの腕を掴んでドアを開け、廊下へローラを出した。

「今の俺は冷静じゃない。一緒にいたらきっとまたローラを襲う。体も心も傷つけてしまう。だから、俺が落ち着くまでは俺の前に姿をあらわさないでほしい」
「……そんな、ヴェルデ様!」

 バタン、とローラの目の前で強く扉が閉じられる。呆然としたまま、ローラは廊下に立ち尽くしていた。
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