眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
「まだ気だるいですが、大丈夫です」
「よかった。無理をさせてごめん。愛が溢れてしまって止まれなかった」

 そう言ってヴェルデはローラを抱きしめた。お互いに何も身につけていない状態なのでヴェルデの体温がダイレクトに伝わってくる。その肌の感触と温もりにローラはまた体の奥が疼くのを感じつつも、ヴェルデを優しく抱きしめ返した。

「嬉しかったのでいいんです、気にしないでください」

 そう言ってヴェルデの胸元にすり、と顔を寄せると、ヴェルデは嬉しそうにぎゅっとローラを抱きしめ、困ったようにため息をついた。

「ローラは煽るのがうまいね。今すぐにでもまた抱きたいところだけど、これ以上は無理をさせたくないから我慢する」

 そう言ってヴェルデはローラの額にキスを落とす。そしてローラの髪の毛を優しく撫でながらヴェルデはローラを見つめた。

「ローラ、どんなことがあっても君を守ると誓うよ。君を狙う人間はローラに近寄らせないし指一本触れさせない。どんな手を使っても守り抜いてみせる。だから安心して」

 ヴェルデのいつにも増した真剣な表情と声にローラは胸が高鳴る。今まで何度も聞いた言葉ではあるけれど、より一層力強く、ヴェルデの思いが感じられてヴェルデから目が離せない。

「ありがとうございます。でも、どうか無茶はしないでくださいね。私のせいでヴェルデ様に何かあるのは絶対に嫌ですから」

 そう言ってローラはヴェルデに抱きつく。ヴェルデのことは絶対に失いたくない、ローラに取ってヴェルデはそれほどまでに大きな存在になっている。百年の眠りから目覚めさせてくれた人、そして絶望を受け止め自分の居場所を作ってくれた人だからなのはもちろんだが、今は何よりもヴェルデのことを心の底から愛しているからだ。

「大丈夫、ローラに心配はかけない。俺はこの国の筆頭魔術師なんだから誰にも負けないよ」

 そう言ってヴェルデはローラを力強く抱きしめ返した。

「夜明けまではまだ時間がありそうだ。もう少し寝よう」

 ヴェルデに言われて、ローラは大きな安心感に包まれて微笑みながら瞳を閉じる。あんなに怖かった夜が、今ではすっかり嘘のようだ。そして腕の中にいるそんなローラを見つめながら、ヴェルデもまた嬉しそうに微笑みながら瞳を閉じた。
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