眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛

2 同じ顔

(どうしてここにエルヴィン殿下がいる!?まさか、ローラのように百年以上も生き延びて……いや、そんなはずがない。だが、ローラはこの男を見てはっきりエルヴィン殿下と言った。それに今も怯えている。一体、どう言うことだ……!?)

 ヴェルデはローラを庇うようにして男の前に立ち塞がり、男を睨み付ける。男は、ローラとヴェルデを見てただ驚いた顔をしている。だが、すぐに苦い顔をしてヴェルデに言った。

「ここにいるとまずい。ローラ姫は狙われている。あんたが一体誰なのか分からないが、その人のことが大切なんだろう。だったらここからすぐに立ち去ってくれ。そしてもう二度とここには立ち寄るな」
「それはどういう……」

 ヴェルデが言いかけると、男はヴェルデとローラの後ろの方を見てチッと舌打ちした。

「兄貴たちが戻ってきた。あいつらに見つかる前に、早く!」

 男の視線の方を見ると、商人のような男二人が遠くからこちらに歩いてくるのが見える。ヴェルデは咄嗟に自分の羽織っていたローブをローラに羽織りフードを被せると、ローラの手を引いて足速に店の前から路地裏の方へ歩いて行った。

「ローラ、振り向いちゃダメだ。俺の後に続いてただ前を見て歩いて」

 ヴェルデが静かに言うと、ローラは小さく頷いてヴェルデの隣を歩いている路地裏に入り、出店から随分と離れただろうところでヴェルデは立ち止まった。周囲を見渡し警戒するが、不審者はいないようだ。

「大丈夫?」

 ヴェルデがそう言ってローラを覗き込むと、ローラは静かに微笑んで頷く。だが、顔面は蒼白でまだ少し震えている。そんなローラを見てヴェルデは思わずローラを抱きしめた。

「早く屋敷へ帰ろう」
< 3 / 13 >

この作品をシェア

pagetop