眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛

3 エルヴィン殿下の末裔

 ローラとヴェルデが出店市でエルヴィン殿下らしき人物と出会ってから三日が経った。今、応接室でローラとヴェルデ、そしてフェインの三人の目の前に、エルヴィン殿下と思わしき人物が座っている。ヴェルデとフェインが男の素性を割り出し、接触して屋敷へ迎え入れたのだ。

「わざわざお越しいただいて申し訳ありません」
「いや、ローラ姫のためにも本当はもう二度と接触したくなかったが……あんたたちがどうしてもと言うから仕方がないよ」

 エルヴィン殿下の顔をしたその男は、やや困ったような顔で微笑んだ。その顔を見て、ローラはやはり胸が苦しくなる。

「あなたの素性は一通り調べました。あなたはエルヴィン殿下の末裔にあたる人物なのですね」

 ヴェルデがそう言うとエルヴィン殿下と瓜二つのその男は、ローラを見つめてから静かに息を吐く。そして、ゆっくりと口を開いた。

「ああ。俺の名前はイヴだ。ここから海を隔てた向こうにあるギルジェ国から、兄貴二人と一緒に行商で来ている」

 先日あった時にも思ったが、声までそっくりでローラは息を呑む。こんなにも似ているのに、エルヴィンの末裔とはいえ全くの別人なのだ。

「それで、先日あなたは兄貴たちがローラのことを狙っている、と言っていました。それは一体どういう意味でしょうか」

 ローラの膝の上にあるローラの手をぎゅっと握り締め、ヴェルデはイヴに聞いた。いつもの優しい顔ではなく、真剣で今にも食ってかかりそうな勢いさえああるのだが、それを何とか必死に堪えているのが伝わってくる。
 ヴェルデの隣に座っていたフェインも、イヴの顔をじっと見つめていた。
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