ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
流すだけ涙を流し、少しだけ落ち着いてきたあたしは、嗚咽が止まるまで待っていた。

幸い雑草だらけで、遊具もすっかり錆びついてしまっているこの公園には、誰も近寄らない。

ブランコやシーソーは撤去され、その名残で柱だけが残っており、滑り台だけがぽつんと置かれたこの場所で、日が暮れるのを眺めていた。

すると、背後にある植え込みの向こうから男数人の話し声がして、その中に聞き覚えのある声があることに気がついた。

「じゃあ、俺駅なんで」

「あぁ、そっか。日向のとこへ行くのか?」

「はい」

「お前も大変だなぁ。あんな奴のお守りして」

トラだ。

木々を超えた先の道にトラが数人の男たちと会話している。

公園の中に入ってこない限りあたしの姿は見えることはないが、少しだけ身を小さくしてこっそり聞き耳を立てた。
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