ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
「やめなよ。ねぇ、ミヤ。久しぶりだから、ちょっと話したいだけなの。ほんとに。だから、向こうの公園でゆっくり話さない?」

カナミさんが指差した方は、北口方面だった。

ドラトラに行く以外で北側に行ったことがないあたしには、本当にその先に公園があるのかもわからない。

作戦を変えたのか、優しく言葉を選び始めたカナミさんの魂胆なんかバレバレなのに、それに気づいてないカナミさんを馬鹿だと思った。

「あたしは、話すことはないんですけど……」

「あたしとマリにはあるんだよねぇ。わかる? だからついてきてほしいんだってば」

「いや、あたし帰らないと……」

「アンタの実家飲み屋じゃん。門限なんてあるわけないっしょ」

蔑みを纏ったその言葉に苛立ちを覚えてしまい、それが顔に出たかと思った時には遅かった。
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