ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
しばらく呆然とした後、隣同士で顔を見合わせ始めた紗理奈たちは、焦って言い訳を口々に言い始めた。

だけどトラはあたしだけをジッと見ながら近づいてきて、砂場に寝転んだあたしの顔の前に屈んだ。

呆然とトラを見ると、その目が物語っていた。

『だから言っただろ?』

そう言われている気分だった。

惨めな自分を見られたことが恥ずかしくて、手を顔の前に持ってきて、トラから視線を外し顔を隠した。

トラがフッと笑ったのが聞こえて、あたしは泣きそうになった。

「コジローさん、あのっ……」

「あのさ、色々あるんだろうけど、コイツ俺の知り合いなんだわ。悪いけど、これくらいにしといてやってくんない?」

紗理奈の声を遮ってトラが提案すると、再び静寂が訪れた。

君臨した悪魔は、どんどん自分のペースに持っていく。
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