ファミリア・ストレンジャー㊤【完】

欲しいもの

昨日から自室に籠もりっぱなしのあたしを、ママは無理矢理引きずり出そうとはしてこない。

血と砂で汚れた制服を見て、察したのかもしれない。

二階の自分の部屋に帰ってきてから籠もりっぱなしのあたしは、自分の顔が酷すぎて鏡を見ることすら億劫だ。

こめかみの辺りにはヒールで削られたような傷があり、あのとき頰から出血したのかと思ったが、出処はここだったらしい。

お腹と頭を庇うようにして護っていた腕には、青から赤、稀に紫など、色は様々で腫れ上がっている。

身体はまだいい。

顔の腫れが引かなくて、瞼を動かすのも辛い。

ただでさえ殴られたおかげで腫れているのに、昨日から止まらない涙はそれに拍車をかけた。

身体のダルさと憂鬱な気持ちは晴れることはなくて、今日一日ベッドの上で、窓の外で日が落ちていくのを見ながら過ごした。
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