ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
「で? これはまたどうしたの? アンタ高校生になってまで落ち着かないのね」

「……あたし悪くないもん」

「謝らなかったの?」

「だって悪くないもん」

「出た、頑固。口先だけでも謝って、後は適当なこと口走っちゃえば解決なのに」

「絶対やだ。……そんなかっこ悪いこと、したくない」

目を瞑って蒸しタオルを受け入れていたあたしは、急にその感触がなくなって外気に素肌が触れたことで目を開けた。

さっきよりは幾分開きやすくなった瞼を開いて見えたのは、満面の笑みを浮かべるママだった。

「それでこそあたしの可愛い娘。美夜子のそういうところ、ママは好きよ」

ママはストレートにあたしに愛情表現をしてくれる。

そんなのいつものことなのに、何気ないその言葉に涙腺が刺激され、目の淵に涙が溜まるのがわかった。
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