ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
「あ〜あ、でもママ心配だなぁ。女の子なんだから、程々にしときなさいよ。ちゃんと明日病院に行きなさい」

「……はい」

口調と声色の変化で、ここは素直に返事をしておくべきだと察したあたしは、ママから視線をそらしてそう答えた。

「よろしい。じゃ、向こうから行ってらっしゃい」

「へ? 向こうって?」

「玄関よ。アンタが出てくるの待ってる子がいるの」

「待ってるって……」

「こんな時間なのに店の前でうろうろしてるから、まだ開店前だって言おうとしたら、知った顔なんだもの」

「……」

「アンタこの前、すごい人だから〜とかなんとか言っちゃって、ちゃんと捕まえてんじゃない」

態とらしく手を口の前に持ってきてニヤニヤ笑い、ママはからかうような目を向けてあたしを急かした。

自然と向いてしまった玄関の向こうにいる人物を、想像した。
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