ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
もう二度と会うことはないと思っていたのに、昨日に引き続きこうもあっさり会ってしまうと拍子抜けだ。

受け取ったヘルメットを被り、バイクに跨り待っているトラの背中にしがみつきながら、何とか後ろに乗ることができた。

あたしか乗ったのを確認すると、エンジンを入れて低い唸り声をあげたバイクは、トラの手により息を吹き返した獣のようだった。

トラの腰に手を回して抱き着き、中学のときはよく先輩に後ろに乗せてもらっていたことを思い出した。

当時さすがは中学生。

免許なんて持っているはずがなく、何でも興味を持ってやんちゃをしたくなるお年頃。

さすがに、トラは持ってるよね?と要らぬ心配だろうが、少しそう思った。

目に映っては流れていく街並みと、頰を撫ぜる風がやけにセンチメンタルな気分にさせてくれた。
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