ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
「みゃーこ、俺の何が欲しいの?」

「……」

少しだけ聞き逃してくれていることを期待したけど、トラの耳はしっかりと拾っていたらしい。

センチメンタルなあたしの独り言に対し、心底不思議そうに少し俯いていたあたしの顔を覗き込んだ。

「初めて言われた」

「……」

「俺、いつも欲しがる側だったから」

「え?」

「俺もみゃーこみたいに、リュウにずっと欲しがってた」

すっかり日が暮れてしまった今、背後に灯る街灯の光だけが、トラの表情を見れる手がかりだった。

あたしの顔を覗き込むのをやめ、海に身体を向けると、背後から街灯がトラを照らした。

街灯を背負い、目鼻立ちのはっきりしたトラの顔には影がかかって、伏せ目がちに閉じた目が更に哀愁を漂わせた。
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