ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
ママにはバレてしまったけど、パパにまでバレるわけにはいかないから、化粧をしっかりしてから朝ご飯を食べよう。

部屋のドアをゆっくり開けて、階段から少し顔を出し一階の様子に耳をそばだてる。

リビングからテレビの音が聞こえてくるので、きっとパパはソファーに踏ん反り返ってテレビでも見てるはずだ。

その隙を狙って洗面所まで忍び足で行き、できるだけ静かに顔を洗って歯磨きをした。

切れていた口内は意外に治りが良く、もう傷口に沁みることはないけど、なんとなくその辺りには気を遣ってしまう。

鏡に映る自分の姿は気怠げで、気の抜けた目と、目の下のクマ、頰に大きく浮かんだ青アザ。

一言で言ってしまえば疲れた顔をしていて、思ったよりも酷い有様で思わず苦笑いが溢れた。

醜い自分の姿から目をそらして、洗面所から出るときもパパの様子を窺いながら、細心の注意を払って自室まで戻った。
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