ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
イヤホンから流れるのは、二十年前に流行った有名なロックバンドのマイナー曲。

両耳にイヤホンをつけてかなりの音量で流しているおかげで、学校の中に入っても耳障りな話し声なんて聞こえない。

頭の中で響く重点音の嵐、荒々しいリズムがあたしの気分を高揚させてくれて、まるであたしだけ別世界にいるような感覚になる。

外界から隔たれた場所で、あたしは世界を見下してる。

席に着いて一息ついたとき、あたしの世界は壊された。


「もぉ〜、ミヤって呼んでるのに! おはよっ」

「……おはよ」

突然イヤホンを取られたせいで、あたしの頭は外界の音に慣れるまで時間がかかる。

あたしの目の前の椅子をあたしの方へ向け、自分の席のように紗理奈(さりな)は御構い無しにそこに座った。
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