ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
「んな顔すんなよ」

「だって……」

「それより、俺の方が驚いてんだけど。リュウと普通に話したんだろ? アイツ俺が拾ってくる女とか特に、毛嫌いしてたのに」

「……それは、トラのことがあったからだよ」

もっと聞きたいことがあったはずなのに、元に戻ったトラを見ると安心してしまって、それは今度でいいような気がしてきた。

トラとはこれからも一緒にいるんだし、前よりも仲が深くなったような気がするし、今はこれでいい。

もしまたトラが自分が嫌で嫌で仕方なくなったとき、本音を吐き出せる人がいないなら、あたしがそれを聞いてあげたい。

あたし以外にそれができる人がいるのは、どういう訳か、どうしても嫌だと思った。
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