ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
「ごめん、あたしリュウと約束あるから」

「あっ、そうなんだぁ。気にしないでぇ、またお話ししようねぇ」

「今度、飲み行こうよ。三人で」

千春の一方的な約束に聞こえないふりをして、あたしはスクールバッグを持ってリュウの方へ歩き出した。

リュウは最初全くこちらを見ていなかったけど、自分に近寄ってくるあたしを見て、心底嫌そうな顔をした。

そんなリュウに構わず後ろをついて行き、トラの部屋まで来ると、ようやくリュウが口を開いた。

「今日はトラ、まだ来ないぞ」

「……昨日聞いたから知ってる」

「どうでもいいけど、俺をダシに使うな」

リュウはあたしが穂花たちを苦手としていることを知ってて、自分も巻き込まれるのが嫌みたい。

リュウはいつものように一人用の椅子に座ると、机の上にテキストやノートを並べ始めた。
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