ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
「男のくだらない意地だよ」

「えー、何それ」

「そこで逃げたら格好悪い状況だったんだよ。それに、トラを売ったみたいで後味悪いだろ」

リュウはそう言ったけど、あたしはうまく誤魔化されたような気がしてならなかった。

納得いかなくてジーッとリュウを見てみたけど、そんなあたしに気付いてるくせに当の本人は素知らぬ顔で、タバコを吸っている。

「じゃあさ」

「鬱陶しい」

「何でリュウも一年ダブッてるの?」

リュウが鑑別所にいた期間は一ヶ月だと聞いた。

それなら、一年の遅れも出ずに済んだはずで、その空白の期間が気になった。

「別に、俺がいつ高校受験しようが、俺の自由だろ」

それは何ともリュウらしくない答えで、リュウのトラに対する優しさが、そこにある気がした。
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