ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
あたしが捻くれてるのは自分でも重々承知してるけど、リュウが半笑いで言うから、思わず手が出てしまった。

だけどリュウは椅子に座ったまま床を蹴り、キャスターであたしから遠ざかりそれをあっさり避ける。

「……で、まぁ少しずつ知り始めたけど、やっぱり嫌な奴、いや、なんか苦手だった」

「苦手?」

「だって、トラはあたしが言われたくないことわかってて、わざと言うんだよ。それで嫌われる意味がわかんないとか言うんだから、おかしいよね」

あたしはトラに言われた数々の言葉を思い出すと共に、あの悪魔のような笑みが脳裏を過ぎる。

今思えば、あれがトラが隠し続けてきた、トラの本当の顔だったのかもしれない。
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