ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
休みの日にちょっと見かけて話したくらいで、ここまで調子に乗ることができるんだから幸せだ。

トラもたまったもんじゃないと思う。

世の中にこんな女がいるから、あの二人の存在が今みたいに崇められて、二人の知らないところで有名になっていって。

まるで動物園のパンダだ。だけどあたしは絶対そんな馬鹿な真似しない。

そんな風に群がればうざがられるのがオチだし、ドラトラメンバーのあたしたちを見る目も変わってしまう。

そんな馬鹿な女に成り下がるのは結構だけど、あたしまで巻き込まないでほしい。

見えてきたドラトラを前に、あたしはその風景をまた後ろから見ていた。

もう一人のあたしが、あたしを置いてどんどんドラトラに近づいて行く。

馬鹿みたいだって思ってるのに、そこから抜け出す勇気のないあたしは、ただの臆病者だ。
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