ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
「じゃ、上行くか」


朝陽と海里が立ち上がり、あたしもそれに釣られて席を立ったけど、着いて行っていいのかわからずモタモタしていた。


「ミヤ? 来いよ」

「あたしも行って大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫〜」

あまり深く考えてなさそうな海里の緩い口調に不安になったが、とりあえず後ろを着いて行くことにした。

カウンターの前に二階に上がる階段があることは知っていたが、一度もそこに踏み入ったことはなかったし、行こうとも思わなかった。

何故かって、ここを上っていくのはいつも決まって日向龍之介か、トラだったから。

あたしたちにとって暗黙の了解のようなものだった。

わざわざ言わないけど、二階には上がるな。

それがドラトラのルールなのかとさえ思っていた。
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