ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
何となくその後ろ姿を見送っていると、改めて自分とは別次元の人間だなと再認識し、朝陽に呼ばれるままに目の前のドアを開けた。

部屋の中はテレビとソファーベッド、それだけしか置いてなくて、朝陽がソファーベッドをソファーの形に戻していた。

「ごめんね。まさかここで龍之介くん寝てると思わなくて」

「えっ、ううん、全然。……あたし、ほんとに来てよかったの?」

「大丈夫だよ。龍之介くんに、何か言われた?」

「ううん。あたしの存在に気づいてるのか怪しいほど、綺麗にスルーされた」

確かに目は合った。合ったけど、向こうから見てあたしは存在していないのか、と思ってしまうほど、日向龍之介は反応を示さなかった。

「気づいてるに決まってんだろ。確かに龍之介くん、あんな感じだからわかりにくいけど」

海里があたしを馬鹿にしたようにそう言った。
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