ファミリア・ストレンジャー㊤【完】
「女の世界ってね、薄情なの。みんな足並み揃えてないと、前に出ても後ろに出ても、除外されちゃうのよ。こんな世界くだらないって、あたしだって思ってる。だけど逃げ出せないんだから、あたしはただの臆病者なの」

初めて自分の思いをここまで吐露して、トラの表情を見るのが怖かった。

俯いて水溜りに落ちる雨粒を見ているあたしは、トラから見てどう映っているんだろう。

あたしはよくトラたちが目にするような、滑稽で、頭が悪い女たちとは違う。

だから、一緒にしないでーー。

「……っはは、なるほどな」

突然笑い始めたトラに驚いて、顔を上げるとそこには無邪気な笑顔なんかじゃない、あたしを追い詰めるような意地の悪い笑みを浮かべる悪魔の姿。

短くなったタバコを地面に落とし、二本目となるタバコに火を点けた。
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