百日後に離婚予定のはずが、溺愛モードに入りました!
 こういう人の多いところは苦手で、必要最低限しか出席していない。だから仲のいい令嬢もいないし、ダンスにも興味がないから来るたびに壁の花になっている。

「アラン・トーラス様、ご到着でございます!」
 声が響いた瞬間、きゃあ! と黄色い悲鳴が上がった。

 なにごとだろうかとそちらを見て、私は驚いた。
 まるで精霊のように美しい男性がいたからだ。

 流れる金髪は太陽の光を紡いだように輝き、緑の瞳は新緑よりも鮮やかだ。細面に似合わない鍛えられた体に誂えた服は上質の絹。暗い緑のコートには落ち着きがあり、彼の上品さを際立てていた。

 彼は会場に入るなり令嬢たちに囲まれる。
「アラン様、お会いしたかったですわ!」
「アラン様、今日もとても素敵ですわ!」
「ファーストダンスは私とお願いいたしますわ」
「あら、わたくしが先よ」

 わいわいとはしゃぐ女性たちに、彼は笑みを返す。が、困惑していることはあきらかだった。

 どうして令嬢たちは察してあげないのだろうと疑問だが、それよりも彼といたいという欲望が勝つのだろうか。

 ダンスが始まり、彼は仕方なさそうに勝手に令嬢たちが決めた順番で踊り始めた。下手に断ると今後の人間関係に差しさわるのだろう。貴族社会のめんどくさいところだ。

 モテるのも大変だな。私はまったくモテないので誰からの誘われずに楽で良かった。
 が、私がずっと壁の花でいることに何人かの令嬢が気づいてしまった。
< 2 / 12 >

この作品をシェア

pagetop